
What is the next movement? ️
TEXT by Koji UEDA ( Alternate Sneakers )
■格差による「スニーカーからの心離れ」
9月末、Travis Scott × AIR JORDAN 1 LOW OG SP(DM7866 200)がリリースされ、
俄な盛り上がりを見せましたが…既にスニーカームーブメント全体を押し上げるトリガーになる事はありませんでした。
これは、過去のブーム終焉後においてもピンポイントで注目されるプロダクトがあったのと同じで、時代が変わっても、その流れは変わらない様です。

過去と現在で違うのは、やはりSNSによる影響が大きいという事です。
ムーブメントが右肩上がりの時はプラスに作用しますが、マイナスに転じると加速度的なマイナス要素を生み出します。
常態化したメーカーによるオンラインセールに加え、アウトレットストアの状況は…あるラインを超えるとユーザーの購買意欲を削ぎ落とすというのも、その一例です。

そして東京(首都圏)一点集中もまた、マイナスにクローズアップされる事になります。
この事に触れると批判やヘイトと誤認される方もいらっしゃいますが、そうではありませんので誤解がない様にお願いいたします。
TravisやA Ma Maniereといった今も人気のコラボレーションの店頭販売は東京のみ。これはメーカーによる戦略のひとつなので如何ともし難い。 なので、東京一点集中そのものに今さら異を唱える事はしません。

但し、ムーブメントが下火になった今…地方ではブーム全盛期には目立たなかったある種の影が水面下で広がり始めています。その事は地方に住むユーザーの感想に隠れている様に思います。
以下はスニーカーが好きな関西に住む知人の何人かにムーブメントが落ち着いた今の心境を伺い、その意見を箇条書きにしたものです。
「もう東京以外は並ぶ事もなくなった感じですね。残念な感じです」
「皆さん、YouTubeで東京のアトモス、T23、WOFなどの並び動画とか見てイライラされてる方も多いかと思います」
「周りもスニーカー系YouTubeの動画も見なくなって来てます」
「地方民から”ドンドン”スニーカーを買わなくなって来て、ブームの終わりを加速させてる感じな気がします」
「スニーカーを楽しみにして来た人達には、この状況は何か裏切られてた感じもします」
「愚痴になりますが、ナイキもWOFが出来て、状況はかなり変わったと思いますが、余りに差別化が酷いと思います」
「関西で唯一現場で抽選が受けれるアトモスにも行く事がめっきり減って、集めたアトモスドレコも使う事がなくなりました」
「現場の並びが楽しかっただけに、それが殆どなくなって残念で仕方ないです」
「出来るだけ早く良い方向に向いて行ってくれる事を祈ります」
〈以上、原文のまま)

これらは妬みやクレーム等ではなく、地方に住むスニーカーファンの飾り気のない感想であり、切実な思いです。
YouTubeに触れられたものもありますがYouTubeチャンネルが悪いわけではなく、東京だけの抽選販売の様子はその他地域の者には関係のない…まるで東京ローカル番組を見るかの様な感覚になるという事だと思います。
このブーム全盛期にはなかった醒めた感覚がSNSによって増幅され、心情の乖離がボディブローの様にスニーカーシーンに深刻なダメージを与える。
そして気付いた頃には「スニーカーからの心離れ」を引き起こしている。
これを取るに足らない事と見過ごすのか、地方をも巻き込んで再生を図るのかはベンダー次第という事になります。
付け加えると、NIKEだけでなくasicsやnew balance、on、HOKA等も直営店がない地方ではそれほど盛り上がっている様には見えないのでは?これもまた環境が伴わない事による格差によるもの。

■ムーブメント÷X+α=ネクストムーブメント
今や知らない人の方が多くなりましたが…80年代以降、大小含めていくつものスニーカームーブメントがありました。
それぞれのムーブメントには特徴があり、その要素は部分的ではあっても次のフェーズへ影響を与え受け継がれています。
この度のハイプ及びリセールスニーカーブームの要素を受け継ぐ次なるムーブメントがどの様なものになるのかは、今は未だ分かりません。 唯一分かるのは、リセールという要素に偏ったムーブメントが再び繰り返されたなら、スニーカーは徐々にカルチャーとは無縁の存在なって行くだろうという事。 そ
の答えが明確になるのは10年後、もしくは20年後の事になるのかも知れません。
■The beginning of the restructuring…

10月14日、かねてからの報道の通りエリオット・ヒル氏がナイキのCEOに就任し…次いでいくつかの重要ポストにナイキを熟知するベテランが昇格、あるいは再任しているという。言うならば事業運営や業績回復を目的とした企業再編が始まったという事。だからといって大きくなった組織。簡単にScrap and buildという訳にはいかず、次の日から一変するというものではありません。
特に新経営陣の指示や意向をどこまで効率よく実践出来るかが課題。エリオット・ヒル氏が1を言えば10を理解し即時行動に移せる人材が、皆無ではないもののどれほど残っているのか。それが出来るナイキの企業文化を受け継いだ40代から50代の従業員の多くを、過去10年足らずの間にレイオフの名のもとに大量放出した影響は今後も続きそう。
「営利を目的とする企業としてレイオフは当然」と聞いたふうなコメントをしていたアナリストがいましたが…リストラが招いたツケは大きい。
いずれにしてもCEOを筆頭に主要ポストにナイキを熟知した経験と実績のあるベテランの方々が就任した事による成果を…我々ユーザーが実感出来る様になるまでには、それなりの時間を要する事になるでしょう。
そしてそれは、レアスニーカーを待ち望む昨今のスニーカーヘッズの意にはそぐわないものになるかも知れません。
