
AIR MAX Dn
新しく開発されたダイナミックエアユニット搭載のAIR MAX Dnが登場するという事で、いち早く実際に履き試し感想をこのコラムに書こうと考え…2月24日の早朝よりSupremeの店頭入店順抽選に臨むも取得した番号が呼び出しされる前に完売となり、あえなくその計画は頓挫しました。

※寒空のもと3時間近く立ったまま並び、その後2時間ほどの待機は老体には酷というか無謀な試みだという事を痛感(苦笑)。

今年のAIR MAX DAYは制定されてから10周年らしく…3月のこのタイミングで書くに相応しいのはやはりAIR MAXの事。かと言って今更AIR MAX狩り等という既に擦り過ぎられた話題は些かうんざりでしょうから、ギュッと焦点を絞ってナイキエアについてほんの少し触れたいと思います。
◼エアバッグ -気体の変遷-
エアマックス通と言われる方なら誰もが知っていて当然の事ですが、現在のナイキエアバッグの中には窒素が入っています。
ですが、初めてエアクッショニング機能を搭載した1978年発売のAIR TAILWINDから1989年までのほとんどのエア搭載プロダクトのソールにはフロン系ガスのFreon 116(ヘキサフルオロエタン)が使用されていました。
そして、Freon 116の生産終了によって1989年からはSF6(六フッ化硫黄)ガスにシフトする事になります。
しかし、1997年に京都で開催された国連気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)で採択された先進国の温室効果ガス排出量削減が各国ごとに設定された事を受け、ナイキはブランドとしての責務を果たすべく地球温暖化に影響があるとされるSF6の使用を段階的に削減し終わらせる方針を固めます。ブランドとしてSF6使用を段階的に削減しつつ、新たなエアテクノロジーの開発に着手し始めたのです。

しかしながら、SF6の使用を前提に成立していたテクノロジーを改変し、既存のプロダクトに採用されているエアの形状や感触、その機能を維持するのは容易なことではなく…当初の予定より更に約6年の歳月を費やし、試行錯誤を重ねて2006年にようやく窒素によるエアユニットを搭載したAIR MAX 360を登場させました(余談ですが、AIR MAX 360は2006年1月21日午前0時より世界のどの都市よりも早く日本で発売となりました)。
この事から、1999年以降2005年までエアユニットの進化が停滞したのは、SF6から窒素にシフトした新ナイキエアユニットの開発に時間を要した事が要因したと推測できます。

また、この窒素を使用した環境に優しいテクノロジー開発の努力は、同時に新しいエアのデザイン(形)や履き心地を追求する可能性を広げ…AIR MAX 360に採用された360度フルレングスビジブルエアユニットで具現化され、2017年のAIR VAPORMAXにも反映されています。
◼AIR MAX Dn

オフィシャルアナウンスがないので100%正確ではないものの、AIR MAX Dnのデュアルプレッシャーチューブを採用したダイナミックエアユニットにも窒素が使われていると思ってまず間違いないでしょう。
AIR MAX Dnに搭載されているダイナミックエアの特徴は、非現実的とも言える快適さに加えスムーズなストライド、跳ね上がる様な反発性を実現するために設計された新しいデュアルチャンバーと4つのチューブ型ナイキエアユニットで構築されています。
デュアルプレッシャーのエアユニットは、それぞれ2つのチューブを備えた2つの加圧チャンバーで構成され、背面2つのチューブ (15psi)のより高い圧力と前面2つのチューブ(5psi)の低い圧力で調整されています。
走行や歩行で体重移動すると各チャンバーのチューブ間をエア(窒素)が自由に流れ、ステップの移動中に起こる圧力の動きに反応して滑らかな履き心地と着地感を足裏に感じる事が出来ます。

デザインや上記の様なニュータイプのエアユニットを搭載しているという事に加え、エアバッグ内の気体がFreon 116からSF6、そしてテクノロジーの進化と改良によって窒素へとシフトされたナイキエアの歴史を踏まえた上で、最新のAIR MAX Dnを履いてみてください。
きっと、ナイキエアの真髄をより深く捉える事が出来るはずです。
※ナイキ社に取材したわけではないので時期〈年代)的なものに若干の差異はあるかと思いますが…エアの変遷については概ね以上の様な理解で間違いないかと存じます。
